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2008年12月07日
T秘境ツアー 後編
T秘境の魅力はギャップだと言える。
アプローチ途中は何の変哲もない、谷戸に点在する小集落の景観そのものである。多摩丘陵にあってもおかしくない風景が広がっているのである。
しかしトンネルの向こうに待っているのは──
周囲は基盤岩の切り立った崖に囲まれている。高さ10m程だろうか。
完全に外界から隔絶され、非日常の世界に紛れ込んだような錯覚に陥る。
川幅は広いところでゆうに6m。
水深は概ね3㎝ほどだが、深いところで数十㎝はあろう。
幸い水量もなく、基盤が砂岩質だったこともあり、我々は河床を歩いて奥へと向かった。
熱帯雨林の湿地帯を彷彿とさせる。土壌をえぐり取られても倒れない姿に感動すら覚えてしまう。そんな気持ちを抱かせる何かを、この空間は持っている。
そして──
我々の眼前に第一の関門が姿を見せる。
小滝の左側には明らかに人工のステップが刻まれている。
それを頼りに滝をクリアし、さらに奥を目指す。
途中幾つかの瀬を渡り、小滝をクリアしていくと、最大の難所が姿を見せるのだ。
それはまさに劇的な形で姿を現す。そして、我々は圧倒された!
巨大な三段滝である! その頂上には天然の隧道が口を開けているのだ!!
そんじょそこらのアトラクションを凌駕するクオリティ!
滝の右側にロープを発見した我々は、直登を試みた!
見よ! 人が存在の小ささを! まるでゴミの──何でもありません。
命綱を伝って登る登る……
恐る恐る下を覗いて、とんでもない高さだと実感する。もはや後戻りは出来ない。
さらに奥へと進むが、残念ながら、水源まで行くことは断念した。文字通り、一番の山場を越してしまい、急激にモチベーションが下がってきた。
我々は来た道を引き返した。そして、「スプラッシュマウンテン」に再び挑んだのである。
難所を無事に通過し、満ち足りた気持ちで帰途に着いたのだが……
徒然草に「高名の木登り」という説話がある。
まさにそれを地でいく惨事が起きたのである──
RFアオタ
何の変哲も無い場所で転倒!
小外刈りを喰らったように、見事に逝った。幸い浅かったので少し濡れただけで済んだのだが──
最大の悲劇は最後の小滝で起きた。
所々深くなっている箇所に気を付けながら、瀬渡りをしていた時だった。
楓岱が深みに右足を取られたのである。
足一本丸々はまり、バランスを失い、右手をつく。
足の一本くらいくれてやる。手をつけば最悪の状況は回避できると思ったのだが
手も深みにはまった。
この絶望感が分かるだろうか。
初冬の山中で、何で水中にダイブしているのだろう。
本気で思った。サーフィンしてもしなくても、千葉に来ると濡れる運命にあるらしい。
体の半分が水没した。
あ。そこの人、笑って良いよ。
……笑えよ。てか笑うしかねーよ。
ちょっと聞いてくれ。俺この時風邪気味ですよ。前日も自重してノーサーフですよ。
それでっ! この仕打ちですかっ!
デジカメ、GPS受信機、サウンドレコーダー。全てが喰われた。
ものすごく切ない気持ちになった、とだけ記しておきたい。装備品は濡れたが、故障しなかったのが不幸中の幸いである。
そんな感じで、今回の調査は成功したと言える!
とてもいい天気で助かった!
T秘境ツアー 前編
秘境と名付けられた場所は多けれど、一度メディアの洗礼を受け、人が押し寄せるようになると、色あせてしまう事は少なくない。
観光地化は、あるいは良いことかもしれない。環境が整備され安全性が向上する事によって、多くの人々の心に刻み込まれ、豊かな時間を味わえる事につながるならば、むしろ喜ぶべき事だろう。
しかし、我々の目的が、一般人未踏の場所や人々の記憶から忘れ去られ、埋もれてしまった場所を探り出す事にあるならば、そのようなお膳立ては無粋である。
今回の探訪地は知る人ぞ知るシークレットプレイスである。
件の場所は当該集落の水源地のため、現在は集落の頭文字を取って
T秘境
と呼ばれているのだ。
以前、ロケーションがネットで公開され、メディアに晒された事により、心ない探訪者によって荒らされ、警察沙汰となり、立入禁止になりかけたそうである。
以来、暗黙の内にその詳細はぼかされる事となる。
T秘境は、房総半島の山間部に位置する。
東京湾側から国道に入り、造り酒屋を過ぎれば目的の集落である。以前はイチゴ農園の看板が、集落へのアクセスの目印だったらしいが、現在は無い。
つまり、今は目印が全く無いのである。しかし、集落への舗装道路は一箇所しかないので、注意深ければ、アクセス可能だ。
集落の生活道路を進み、二股三叉路を右、右、左と行けば、
秘境への入口が待っている。ここから先は車両立ち入り禁止というのが、暗黙のルールである。
トンネルを抜け、杉林を抜けると
長い年月を掛けて造形された渓谷が我々を出迎えてくれるのだ。